ゆっくり早く

ゆっくり早くエッセイを執筆します。どうか長い目でよろしくお願いします。読者登録されると励みになります。星もうれしいです。まだ慣れてません。

【土砂降り】

 

あの時黙ってごめんね
あの時黙ったままだったのは
何も言葉も聞きたくなくて
携帯を放り出したからなんだ

だから厳密には黙ったじゃなくて
関係を放棄したの
それは僕からなんだね

あなたは言ったよね
もう二人の幸せは見えない
二人を繋いだ襖越しのピアノの旋律は
もう見えないんだと

僕はそれでも信じて疑わずに
十二年も君を想ってきたよ
ただ純粋にとはいかないけれど
あなたのことを忘れないように
繋ぎ止めて楔を打って牢屋に放り込んで
独房で君と踊るためのワルツの練習をしてた

僕の中のあなたが色あせないように
何度も何度も思い出をゲンゾウして
僕の狂いを愛と倒錯して
君の声を暗闇で待ったよ

でも君はとうとう来なかったね
待ち合わせ場所なんてありやしないのに
愚かで記憶の良い僕は君をずっと待ってたよ

さあサヨナラ
フィナーレだ

サドが自分に与える痛みに喜ぶ
自傷以外何者でもないね

そう

君の美しさが痛かった
君の笑顔が痛かった
君が吐く言葉が痛かった
君の横を歩くのが痛かった

君の隣にいる僕が痛かった
カッコつけて弾けないギター
弾けるフリした僕が痛かった
見つめ続ける僕が痛かった
わかり合えると信じてた僕が痛かった

痛いのはごめんだ
僕は甘美な果実になりたい
果汁のドシャブリ

メルヘンだろ
俺はメルヘンなんだ